開かずの吊戸棚

9時40分に起床。眠い。
昨日も夜更かししちゃったしな。
帰省してからは毎晩、みんなが寝室に行ってリビングが静かになってから、特に面白くもないテレビを流しつつ猫と遊んでいる。昨日は大晦日恒例のおもしろ荘を流していたけど、おもしろかったのかどうかも全然覚えてない。イルカにディープキスするおじさんの絵面だけ覚えてる。

父は元日の朝から麻雀に出かけたらしい。どうりで年末、麻雀のYoutubeばかり見ていたわけだ。去年の誕生日にamazonのFireタブレットをあげて以来、すっかりYoutubeの虜らしい。ガラケーを貫き通している父が、少しは現代に追いついてきているようで、密かに安心している。思惑通り。

お昼ご飯は、多すぎた年越しそばの残りを食べた。ふるさと納税で家族5人分を頼んだが、ゆであがった麺の量が多すぎて「これもしかして10人分やった?!(汗)」と母が騒ぎ出す始末。さとふるで確認したけど、5人前だった。帰省するといつも、何もしなくてもご飯が出てくることに感動する。一人暮らしするまで、何も思わなかったけど、毎食5人分作るなんてかなりの重労働だ。母ありがとう。

午後からは、開かずの間になっていたキッチンの吊戸棚に手をつけることにした。母いわく、「昔同居していたおばあちゃん(父方)が置いていったもので、捨てるに捨てられなかった」らしい。が、私の予想ではこれは建前で、掃除の最中に言っていた「ねずみがいっぱいいるって聞いて怖い」というのが本音だと思う。実際、入角の吊戸棚からはネズミの糞の化石みたいなのがいっぱい出てきた。奥に届かないとか適当なことを言って弟に掃除させた。この弟、何を手伝わせても文句ひとつ言わない。休学して地元に帰ってきて、母の実家で農業やら養殖業やらを手伝っているらしいが、これは重宝されるだろうなと思う。掃除を始めてみると、ねずみの糞はまだマシで、もっと大物がいた。シンク下の収納の、入角だ。ここも十数年触っていなかったらしい。実家のキッチンは親戚による造作キッチンで、シンクの向こうに食器棚があるタイプ。その分シンク下の収納は奥が深くなる。入角がデッドスペースになるのは自然の摂理だ。母は「なんか液体系のものが置いちゅうけど...ここもやるが?」と言う。いや、逆に謎の液体を普段調理するシンクの下で熟成し続けている状態のほうが嫌じゃないか?臭いものに蓋をするタイプか。実際、怖い液体が5、6体出てきた。お酒系だとは思うのだが、結局よく分からない。主にどす茶色の液体で、半個体みたいなものもあった。一番怖かったのは、水筒のようなボトルに入った無臭の透明の液体。水だったら腐るはずだし、酒だったら匂いでわかるはずだし、なんだったのか。母は「なにこれ、神様とか...?」と言いつつも容赦なく排水口に流していた。

夜は浦の内ばあちゃん家に行って、毎年恒例の焼き肉。野菜も肉も山盛り乗せて焼くのが浦の内式で、もはや野菜炒め。「ここ以外でこんな焼き方することない」と言うと、祖父は「このほうが待たんとみんな一気に食べれるやろぉ。じゃんじゃん焼けぇ」とのこと。おじいちゃんが買ってくるお肉は本当においしいのだが、この焼き方のせいで若干ありがたみが薄れている気がする。食べ終わったあとはリビングで、テレビを流しながらゆっくりするのが恒例だが、おじいちゃんがひたすら話しかけてくる。正直去年まではめんどくさいと思って適当に流していたのだが、ある時母に「昔の人はいろいろ知っちゅうきね、生きちゅううちに色々聞いときや」と言われてから、妙に納得して、気持ちが変わった。考えてみれば、祖父ともあと何回話せるんだろうか。「猫を飼っている倉庫がシロアリにやられた、柱の国産スギは食べられてない、梁の欧州アカマツがやられた、木曽のヒノキは綺麗だけど柔らかくて強度的にはよくない、建築士の中でも構造の人を大工は先生と呼ぶ、知り合いの大工は仕口から手加工で作っている、根太の間隔455を芯じゃなく内法で取ると後々たわみが大きくなってしまう」等々。私が建築関係だからか、建築関連の話がひたすら続く。聞き返したらどんどん膨らむ。こんなことまで知ってるのか、と驚いた。なんでそんなこと知ってんの?と聞くと「なんでえ。ビニールハウスらあ全部自分で作りゆうに」と。確かに、不自由さが人を成長させる側面はありそうだ。私もビニールハウス作ってみたいな。